タイミングチャート
どんな立派な機械でも、計画した生産能力が出ないなら意味がありません。
設計が終わってからでは遅いので、構想段階で動作の検討をするのが普通です。
動作の検証にはタイミングチャートを使います。
タイミングチャート作成は結構面倒です。
理由
- 全体の関連をよく理解していないと書けない
- 動作の理解が必要(動作速度、安定時間、タイマー設定など)
- いい加減にすると後での問題が大きい(サイクルタイム未達)
私も、サイクルタイムを満たせない時は、構造を変えたり、条件を変えたりして、何度も書き直しをしました。
消しゴムのカスだらけで、掃除のおばさんに文句を言われました。
対象とする動作
- 上下シリンダが下降
- 下降端でワークをチャック
- 上下シリンダが上昇
- 前後シリンダが前進
- 上下シリンダが下降
- 下降端でワークをアンチャック
- 上下シリンダが上昇
- 前後シリンダが後退
この動きをタイミングチャートにすると
- 前後の動作に1.5秒
- 上下の動作に0.5秒
- チャック開閉に0.5秒
として書いてみます。
スタートしてから元の位置に戻るまでが1サイクルになります。
この時間をサイクルタイムと呼びます。(タクトということもあります)
正しいタイミングチャート
時間は決めてあったので、書くことは簡単でした。
今のチャートは正解でしょうか??
正解はない(というよりどれも正解かもしれない)ですが、機械が出来上がった時にスペックを満たしていれば合格です。
つまり、タイミングチャートを書いたときに問題点が出て、その解決策を検討して設計するという使い方です。
(機械動作を制御の人に伝える手段としての使い方もありますが)
実際の動きを理解する
機械の動作を理解する上で、どのように制御しているかを理解することは重要です。
実際のセンサの入力やソレノイドの動作を最初書いたタイミングチャートと比較してみると理解しやすいと思います。
ここで一番言いたい事は、機械は電気信号と違い大きな遅れがあるということです。
信号が入っても移動中だったり、到着しても振動していて収まるまで待たなくてはいけないことが多々あります。
こういう要素は経験によって学ぶことが多いのですが、理屈として知っておくことがよい設計者の条件だと思います。
時間短縮の方法
タイミングチャートを書いてみて、サイクルタイムに間に合わない時の対策を考えましょう。
まず対策項目を列挙します。
- 距離を短くする
- スピードをアップする
- 動作をオーバーラップする
- 動作回数を減らす
- 方式を見直すコストややりやすさを考慮して、これらの中のどれかを選ぶことになります。
では具体的にどのようにするのかを見ていきましょう
距離を短くする
当たり前のことですが、移動距離を短くすれば時間は短くなります。
1サイクルで前後は2回、上下は4回動作します。上下の効果が大きいですよね。
スピードをアップする
エアシリンダをサーボモータ駆動にするとかリニアモータ駆動にする。
時間の計算には加減速の配慮を忘れないこと。
短い距離の移動の場合には、最高速度が速くても移動時間が長くなることがあります。
動作をオーバーラップする
- エアシリンダでは実現しにくいですが、ロボットでは良くやる手です。アーチモーションとかゲートモーションとか言います。
一方の軸の位置決めが完了する前にもう一方の軸をスタートさせるとコーナーがRになります。 - カムを使う場合にも同様に出来ます。
動作回数を減らす
動きを工夫します。
方式を見直す
無理と判断し、構想を変更して対応する場合です。
- 工程を分割する
- 取数を増やす
- 高速動作が可能な方式にする
例:カムを使う