空圧機器
何かを動かそうとしたときに、一番先に思いつくのがエアシリンダです。
エアシリンダは圧縮空気で動きます。
圧縮空気を使っていろいろな動きをさせるための機器を総称して空圧機器と呼びます。
1.空圧源
工場には大型のコンプレッサーがあり、配管を通って工場中に圧縮空気が供給されています。
配管の途中にワンタッチカプラーが付いていて、そこに接続すれば圧縮空気を取り出せます。
簡単につなぐことが出来、漏れても影響が少ないというのがメリットです。
効率としてはあまりよくないので、CO2削減のターゲットとなる場合が多いです。
1)最高使用圧力
供給可能な最高圧力は1.0MPaです。これは高圧ガス保安法の適用を受けない限度です。
SMCのカタログで最高使用圧力を見てみると
ソレノイドバルブSVシリーズ:0.7MPa
エアシリンダCJ1シリーズ :0.7MPa
必ずしも1.0MPa使えるわけではないので、個別に確認してください。
参考)
空気はもっと高い圧力まで圧縮できます。
スキューバーダイビングのタンクでは20MPaです。
(多段コンプレッサーを使って充填します)
2)設備の空気圧力設定
最高使用圧力を超えない範囲で、設備毎にレギュレータで圧力設定を行います。
供給ラインの圧力は常に設定圧力を超えている必要があります。
設定値は客先仕様に合わせる場合が多い。(打ち合わせにて確認)
省エネの観点から低い値を仕様としている工場が多くなっています。
3)圧力低下した場合の対策
なんらかの影響で圧縮空気の供給が不足することが考えられます。
中途半端に動くとトラブルになりますので、その対策としてプレッシャースイッチをつけます。
普通は圧力が低下したときに非常停止状態になるようにします。
4)トラブル
圧力低下による動作不良、非常停止
原因:大量にエアを使う機器がある(エアブローなど)
コンプレッサーの能力不足
すぐに出来る対策:大量に使うところの前に絞りを入れ消費量を減らす
サージタンクを付ける
取り込みの配管を太くする
注意事項
- 空気をドライに保つことは重要です。
水がソレノイドバルブやエアシリンダに入ると動作不良を起こします。 - 最悪の場合、設備の直前にエアドライヤを入れますが、コストアップになりあまりよい方法とは思えません。
5)消費量の計算
空気は圧縮性があるので、体積を記すときにはそのときの圧力を明示することが必要になります。
しかし、毎回圧力を示すのは面倒なので、大気圧に換算するのが普通です。
日本国内で標準大気換算の流量は従来NL/min(ノルマルリッターパーミニッツ)
今後、SI単位系への移行に伴い、L/min(ANR)が一般的表記になると思われる。
参照基準大気(さんしょうきじゅんたいき、ANR;Atmosphere Normale de Reference)とは、「温度20℃、絶対圧101.3kPa (760mmHg)、相対湿度65%の空気」を意味する。
『ウィキペディア(Wikipedia)』より
図でA、A’はシリンダの体積(L(リットル))、
B、B’は配管の体積(L(リットル))です
Pはエアの供給部で、圧力はp(MPa)
1分間にN回往復するとします
エア消費量Q(L/min)は
Q=((A+B)+(A’+B’))×(p+0.1)×N
注)(p+0.1)はゲージ圧を絶対圧に変換しています。圧力表示0のときには大気圧(0.1MPa)ですから。
エアブローや真空エジェクタはこの方法では計算できません。
取扱い説明書を見て計算してください。
2.エアシリンダ
原理・原則1:圧縮空気は体積変化をする
このことを理解して、安全に使ってください

エアシリンダの動きを動画にして見ました。
行きのスイッチを押すと前進して止まる。
戻りのスイッチを押すと後退して止まる。
簡単な動きですが、いろいろなものが付いています。
いろいろなものを理解することがこの章の目的です。
基本構造
筒(シリンダ)の中に動くもの(ピストン)があり、筒についた2つの空気の入り口のどちらからか空気を入れると、ピストンが動くということです。
行き・戻りのどちらかに止まるのが基本です。
途中で止める事もまれにありますが、精度はあてになりません。
動作を行うための構成
エアシリンダ単体では動作の制御が出来ません。それを補うためのものは
速度の調節:出入り口にスピードコントローラ
位置の確認:胴体にセンサ
空気の方向切替:ソレノイドバルブ
ソレノイドバルブの制御:シーケンサ(PLC)(ここではスイッチのみにしました)
(空圧機器だけで制御することも可能ですが、あまり使われていません)
ここではソレノイドバルブまでを学習範囲とします。
センサに付いて
取り付けの注意
ちょっと話がそれますが
設備の業界では機械屋さん(メカ)と電気屋さん(エレキ)で仕事を区分することが多いようです。
メカの中の油・空圧を分けて流体制御としているところもあります。
流体制御が別にあるとき、メカはシリンダの選定はしますが、スピコンとかソレノイドバルブの選定はしません。
細分化は業務の効率をあげる反面、知らなくても出来てしまうということになります。
技術者としては担当範囲に関わらず全体をつかむことが必要と思います。
3.スピードコントローラ
略してスピコン
エアシリンダの速度調整のため取り付けます
1)回路記号とその意味
回路図は動きを理解する上で非常に有効な方法です。
機会を見て覚えて行くようにしてください。
#ref(): File not found: “スピコン.JPG” at page “AirSystem”
回路図を見ればわかるとおり、スピコンはチェック弁(逆止弁)と可変絞り弁の組み合わせになっています。
チェック弁は一方向にだけ流すためのものです。
記号の円の方向から押すと円が押し付けられて、流路が閉じてしまうということを示しています。
反対から押すと、円が離れて流れるような気がしませんか。
チェック弁が閉じたとき、すべてのエアが絞り弁を通るので抵抗が大きくなります。
2)実際の構造
チェック弁は鋼球ではなくゴムを使用してコンパクトに作ってあります。
図はメータアウトの構造を示しています。
シリンダから出る空気は絞りを通るので抵抗が大きい
シリンダに入るときはチェック弁が開き、抵抗が少ない
3)エアシリンダとの組み合わせ
エアシリンダの速度調整を行う場合、メータアウトで使うのが基本です。
メータインで使うと少しの負荷変動で速度が大きく変化します。
(空気が圧縮性流体であるため。油圧回路ではメータインを使う)
4)メータアウトで問題が発生することがあります
メータアウトで使うということの大前提は、アウト側に圧縮空気が残っているということです。
この前提が成り立たない場合は、スピードコントロールが効きません。(速く動きます)
対策としてはメータインのスピコンを追加することです。
双方向の調整が出来るデュアルスピードコントローラと言うのもあります。
スピード調整が多少しづらくなります。
実際に危険が発生する可能性のあるケース
- 3ポジションエキゾーストセンタ(最初からメータインを使う)
(私は使ったことがないので、使用する理由がわからないですが・・) - シングルソレノイド、3ポジションクローズセンタで回路からわずかのエア漏れがある場合(始業時の1回だけ速く動く)
- メンテナンスをした直後
- 垂直に使う場合、負荷によっては注意が必要です。
4.ソレノイドバルブ
ソレノイドバルブのの構造と動作
よく使うパイロット方式の2位置ダブルソレノイド電磁弁の模式図を作って見ました
電磁弁といえば普通はパイロット方式なので、意識している人は意外と少ないのですが、考え方を理解しておくことは役に立ちます。
カタログを見て確認して欲しいのですが、使用圧力範囲が0.1MPa以上あるいはそれより高くなっていませんか。
その理由はパイロット圧を利用して、ピストンを動作させ、それでスプールを動作させていることにあります。
図を見れば、回路図と実物の構造が同じことが理解できると思います。
パイロット式と違ってソレノイドで直接切換えする方式を直動式といいます。
記号が変わっていることをカタログなどで調べると理解が進みます